改正電子帳簿保存法は、1998年7月に施行された電子帳簿保存法を改正したもので、2022年の1月にスタートしました。
電子帳簿保存法は所得税法や法人税法、消費税法等で規定される帳簿書類を納税地において義務付けられている、書面での保存を一定の要件で電磁的記録等に保存することを認める法律です。
電子帳簿保存法上の電磁的記録の保存には、電子帳簿等とスキャナ、そして電子取引の区分があります。
2021年までは税務署長の事前承認制度でしたが、2005年の改正でスキャナ保存が追加され、2015年の改正ではスキャナ保存の要件が緩和されました。
契約書や領収書の3万円未満の上限額も見直され、これが撤廃されています。
このように、電子帳簿保存法は時代の変化に合わせて見直しが行われ、これまでに複数回改正が行われてきたわけです。
2016年の改正ではデジタルカメラや携帯電話の撮影も認められるようになり、2020年の改正でクラウドシステム等のサービスも利用できるように少しずつ要件が緩和されています。
2022年1月からの改正電子帳簿保存法は、改正点が過去最高ともいえるほど多く、大幅な要件の緩和が行われました。
例えば会計ソフトの電子帳簿やスキャナ保存機能が個人事業でも利用可能になったり、税務署長の事前承認制度が廃止されたことも大きいです。
優良な電子帳簿に記録された事項に申告漏れがあった場合は、その申告漏れに課される過少申告加算税5%軽減されるようにもなりました。
この適用を受けるには申告期限までに国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る、過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書の提出が必要です。
一方、スキャナの利用におけるタイムスタンプの付与は、従来の3日以内から2ヶ月と7営業日以内に大幅に見直されました。
クラウドの会計ソフトを使ってアップロードしても構いませんし、期限に間に合わない時は紙の原本を保存すればOKとなっています。
これまでスキャン前には自筆署名が必要でしたが、改正電子帳簿保存法ではこれが不要です。
スキャン後に行われる定期検査も不要になったので、かなり業務の負担が軽減されることになるでしょう。
紙の原本の即時破棄が可能ですから、紙の書類を保管したり管理する手間も減って楽になります。
相互牽制の適正事務処理要件も廃止されたので、運用は1名から可能になっています。
つまり、人員の削減もできることを意味しますから、人件費の圧縮も不可能ではないです。
検索要件は日付と金額、取引先のみとなり、この点も非常に管理が楽になったといえます。
2022年の改正電子帳簿保存法適用前は、スキャナ保存の申請とそれに対する承認件数が限られていました。
とても面倒で紙ベースの保管、管理を選択する法人や個人事業主が多かったわけですが、今回の改正電子帳簿保存法でスキャナ保存の申請承認件数が増えると予想されます。
ただ、電子取引の領収書等の書類については、電子帳簿の利用の有無に関係なく、紙に印刷して保存するものは有効ではなくなりました。
有効な領収書等と認められるのは、会計ソフト等でファイルにタイムスタンプが付与されたものか、訂正や削除が不可能だったり記録が残るシステムでの保存です。
電子取引データの訂正及び、削除の防止に関する事務処理規程の策定、運用や備え付けも有効と認められる領収書等の保存方法です。
ちなみに、改正電子帳簿保存法では改正電帳法における電子取引データの保存義務が、2年間猶予されることになりました。
この大幅な改正を理解する上でのポイントは、承認制度の廃止とタイムスタンプに関する要件の緩和、検索要件の緩和と電子取引の電子データ保存の義務化です。
電子取引をする場合の国税関連書類の保存が電子保存に義務化されたので、法人も個人事業主も問わず、早めに対応することが重要です。